医療従事者さまにも、患者さんにも
やさしい注射針を目指して。

早いものですね。ニプロに入社し、もう30年も経とうとしています。就職活動の際に総合研究所に行った時、忙しいながらもイキイキと働いていた社員の方々の姿が忘れられません。やる気が漲っている表情に惹かれ、私は入社を決めたのです。
以来、汎用医療器具の開発・改良業務に携わってきました。入社時は群馬のグループ工場にてインスリン注射針の開発から始まりました。インスリン注射は毎日、そして一日の中でも複数回行うものですので、痛みが大きいと患者さんも大変な苦痛を感じることになります。それを軽減できるよう、よりスムーズに針が入っていく注射針を目指し改良を重ねていたのがこの時期です。

その後総合研究所に配属され、今度は医療従事者さまに配慮した注射針の開発に取り組むことになります。穿刺（せんし）した注射針を抜く時に針部分が剥き出しになっていると、仮に患者さんがC型肝炎やHIVに感染されていた場合、医療従事者側への感染のリスクが高まります。そうならないよう、抜くと同時に針部分がカバーで覆われる誤穿刺防止医療器具の開発を行っていました。
以降も注射器に薬液を注入する輸液システムをはじめとした、汎用医療器具の改良・開発を行っています。「医療従事者さまにも、患者さんにもやさしい器具を届けたい」その思いは、入社当時から全く変わっていません。

仕事の進め方を見つめ直す転機となった、
タイ工場勤務。

入社5年目の頃に経験したタイ工場での勤務は、仕事というものを考える上で大きな転機となりました。
まず驚いたのが、1,000名を越える工員の指導・管理を行っていたのが、たった10名の日本人だったことです。その10名は自部門だけでなく他部門もほとんど全て把握ししているため、全体会議をやると凄いスピードで方針などが決定していきました。社長を中心に、製造や購買の責任者などが話し合い「今から部品を持って行こう」「こういうタイミングで生産しよう」などが矢継ぎ早に決まっていく。
日本ならもっと数多くの部署で会議を重ねながら、段階を踏み日数をかけてやることを、瞬時に行うような感覚でした。それでいて決して雑ではなく、経験やリスクなども踏まえ適切な判断がなされていたのです。
「仕事は、自分の業務だけを見ていてはいけない」ということを知ったタイ工場勤務でした。

ニプロは、自分で考えて
仕事をさせてもらえる会社。
怖くても、一歩を踏み出して
挑んでほしい。

正直に言います。ニプロは自分で考えて仕事をさせてもらえる素晴らしい会社ですが、若い頃の私は、それが良いとは思えませんでした。怖かったからです。
ですので開発した製品を市場に出すことに対し二の足を踏む部下の姿を目にすると、気持ちは痛いほど分かります。上市には喜びもありますが、責任も伴うからです。

でも、そこを恐れず乗り越えてほしいのです。怖さを持ちつつも私も研究開発を行い、自分が図面を作成して試作品が出来上がった時の嬉しさたるや、何物にも変え難いものでした。この上ない達成感と満足感、そして安堵の瞬間。その時に訪れる至福は、実際に挑み達成した者しか感じることができません。
若い研究員たちには是非、その感動を知ってもらえるよう挑んでもらいたいですし、そのためのフォローも最大限に行っていきたいと思っています。