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Vol.53

胃炎や胃・十二指腸潰瘍の原因とされる 「ピロリ菌」とは何だろう?

胃の粘膜に生息しているらせん状の細菌が「ピロリ菌」です。この「ピロリ菌」は慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍の発症に起因しているとされています。特に日本人の場合、かつて衛生環境が十分に整っていなかった時代に生まれた人の感染率が高く、50歳以上の人の多くが感染しているとも言われています。今回はこの「ピロリ菌」にスポットを当ててみました。

ピロリ菌とは? 鞭毛のあるらせん状の細菌

ピロリ菌とは、2~4×0.5µmの大きさで、らせん状の形をしている細菌で、正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ」といいます。その形や胃の出口付近にある幽門部というところに好んで棲み着くことから、その名がつけられ、日本語では「幽門部に棲み着く、らせん状の細菌」 となります。 4~8本の鞭毛 (べんもう) を使い、 胃粘膜に侵入・潜伏するのが特長です。

定説を覆したピロリ菌の発見 酵素の働きで胃の中でも活動可能

1980年代にピロリ菌は発見されたのですが、それ以前は、強い酸性に保たれた胃の中に細菌が棲み着くことはできない―といわれていました。この定説を覆すこととなったピロリ菌の発見は、まさに世紀の大発見というべきもので、現に2005年には、ピロリ菌の役割を世に伝えたオーストラリアのバリー・J・マーシャルとJ・ロビン・ウォーレンの両氏にノーベル医学生理学賞が授与されています。
では、なぜ細菌にとって過酷な環境である胃の中で、ピロリ菌は棲み着くことができたのでしょうか。それは、胃酸に耐えることができる酵素「ウレアーゼ」を持っているため。ウレアーゼは胃の中にある成分の1つ「尿素」を分解してアルカリ性のアンモニアにします。このアンモニアで自分の周りを覆い、胃酸を中和させることで胃の中に棲み着くことができるというわけです。

感染経路は主に『経口感染』 上下水道整備で感染率は低下

ピロリ菌は口から入って感染する「経口感染」で広まります。しかし、その経路はいくつかの説があるとされています。
主に、ピロリ菌が感染している人の糞尿に混ざって体外に排出され、その後、再び飲料水として体内に入る「口→口」「糞尿→口」が感染経路とされていますが、ハエなどの動物を介する場合もあるとされています。
この辺からも分かるように、上下水道がしっかりと整備された国や地域では感染率が低いのですが、日本は先進国の中でも際立って感染率が高い国。それは、現在のように上下水道が整備される以前、井戸水を主に飲んでいたためだとされています。そのため、50歳代以上の人の感染率が高くなっています。
なお、口から口が感染経路の1つですが、「キス」程度では感染しません。

胃腸の具合でアレッ?と思ったら医療機関を受診し早めの検査を

ピロリ菌は、胃炎や胃・十二指腸潰瘍の発症に大きく起因しているとされています。しかし、ピロリ菌に感染していても、これらの病気を必ず発症するというわけではなく、正しくは「その確率が高くなる」ということになります。
いずれにしても、胃炎や胃・十二指腸潰瘍を起こしやすいと感じている人は、ピロリ菌の検査をおすすめします。
ピロリ菌の検査は、大きく分けて内視鏡を使う方法と使わない方法があります。それぞれの検査方法は以下のとおりですが、患者の負担が軽い上に精度が高い「尿素呼気試験法」を用いる場合が多いようです。

内視鏡を使う方法
・培養法
・迅速ウレアーゼ試験
・組織鏡検法
内視鏡を使わない方法
・尿素呼気試験法
・抗体測定
・便中抗原測定

除菌治療でピロリ菌を退治 薬物使用で下痢・軟便の副作用も

検査によりピロリ菌が発見された場合は、「除菌治療」が行われることがあり、特に胃・十二指腸潰瘍に罹りやすい人の治療や、胃がんの予防に効果的だとされています。
除菌治療には、プロトンポンプ阻害薬と2種類の抗生物質が用いられますが、10~20%の人は胃炎や潰瘍が再発したり、治療そのものが失敗したりする場合があるので、この辺は充分に理解しておく必要があります。
さらに、薬物を用いた治療になるので、副作用が起こることも少なくありません。主な副作用は「下痢や軟便」、「味覚異常」などが挙げられます。しかし、これらの副作用が起こったとしても、よほど重い症状が出ない限り、治療は続行されます。薬物の服用はおよそ1週間です。

専門家の指示に従い、正しい治療を心がけましょう

Vol.53

情報提供:(株)家庭薬新聞社

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